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深尾 良子 「流れるのは時だけ」

¥80,000 税込

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作家名:深尾 良子(Ryoko Fukao)
作品名: 流れるのは時だけ
サイズ: 460mm×380mm
額: 0mm×0mm ×0mm
技法:水性アルキド
制作年:2025

深尾良子の絵画は、風景を描くのではなく、すでに私たちの内側に存在している風景を呼び覚ます。
一見すると静かで簡潔だが、その下には時間の層が幾重にも積み重なり、わずかな線や揺らぎが呼吸するように立ち上がる。
今回の展示で特に際立つのは、彼女が用いている 水性アルキド という素材の存在感である。
水性アルキドは乾燥の過程に独特の「しなやかさ」を残し、半乾きの段階で指先や道具による介入を可能にする。その結果、深尾が行う重ねる・削る・擦る・刻むという一連の行為が、まるで地層から記憶を掘り起こすような深度を画面に与えている。
アルキド独自の落ち着いた光沢と柔らかな硬さは、アクリルの均質さとは異なり、
“半分だけ残された痕跡”
を画面にとどめる。この曖昧で豊かな質感こそが、深尾の抽象風景に「沈黙の中の時間」を宿らせている。
彼女は「私は私の作品についてわかりません」と語る。
それは謙遜でも曖昧さでもなく、作品が鑑賞者との対話の中で“更新され続ける”ことをよく知っているからだ。
彼女の作品は意味を押しつけず、鑑賞者自身の内側に眠っていた記憶や感情を静かに引き寄せる。
■ 技法とマチエール ― 水性アルキドが生む「やわらかな地層」
深尾の制作は、指で塗り込むことから始まる。
水性アルキドを何層も重ね、乾きかけた柔らかな段階で、
削り、擦り、引っかき、研ぎk出し
を行うことで、下層の色がほのかに姿を見せ始める。

この素材によるレイヤーの“溶け合わない接触”は、
• 削った跡のかすかな残響
• 微妙ににじむ境界線
• 消え入りそうで消えない淡い色の揺れ

といったニュアンスをつくりだし、画面に「時間のたまり」を生んでいる。

それは日本の“余白の美”とも呼応し、ミニマリズムの静けさとも重なりながら、決して冷たくはならない。
むしろ、画家の体温がじわりと残る——そんな質感である。
深尾の作品の前に立つと、まず「静けさ」が訪れる。
しかしその静けさは停止ではない。
むしろ、夜明け前の空気のように、
見えない時間がゆっくりと流れ続けている気配
が立ち上がる。

大きな色面は重心となり、小さな線は揺らぎ、光が差すような三角形や、遠景へ向かうような暗部は、“どこかで見たことのある風景”を思い出させる。
それは再現された風景ではなく、
“心の中に残っていた風景が再構成された姿”
である。

ミニマルな構造でありながら、決して無機質ではない。
指跡、傷、曖昧な境界……そのすべてが、作家の時間と体温の痕跡として画面に残る。
そのため鑑賞者は作品を“観る”というより、
“聴く”ように作品を受け取る。

深尾良子が長年望んできた「音楽のような絵」は、今回の展示で確かに形を得ている。
低音のように響く暗い色面、震える線の旋律、滲む光のハーモニー。
作品は語らないが、沈黙の奥で止まらないリズムを奏でている。

最終的に、深尾の絵画は外の世界を描くのではなく、
鑑賞者自身がどこかに置き忘れてきた“内なる風景”へと静かに帰っていく場
を提供する。
それこそが、彼女の作品が静かでありながら深く心に残る理由である。

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