安田 薫 「水の記憶」
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作家名:安田 薫(Kaoru Yasuda)
作品名: 水の記憶
サイズ: 455mm× 275mm ×20mm
額: 0mm×0mm ×0mm
技法:墨
制作年:2025
安田薫は、日本画の伝統に深く根ざしながらも、その技法を現代的に拡張する画家である。
1971年金沢市生まれ。金沢美術工芸大学日本画専攻を卒業し、武蔵野美術学園日本画研究科でさらに研鑽を積んだ。以来、風景や自然の造形性を手がかりに、独自の抽象表現を追求してきた。
安田は、作家ステートメントにある通り、
「日本の画材や技法を用い、風景から得たイメージを再構成する」
姿勢を一貫している。
日本画材を基盤としながらも、
「線」「滲み」「余白」 を徹底的に構造化した “現代の風景画” と呼ぶべきものである。
技法とマチエール――日本画材を媒介にした「にじみの構築」
• 墨による線の反復
• 吸い込みや滲みによる濃淡のグラデーション
• 和紙または和紙系支持体(推測ですが)特有の発色と浸透の差
• 乾湿の時間差を利用した「かすれ」「引きずり」「滲み止めの痕」が連続し、日本画の伝統技法を“構造的な抽象”へ転換する方法論が読み取れる。
このアプローチは、戦後日本画の実験(例えば髙山辰雄や加山又造の質感探索)と、現代のドローイング的抽象、さらにモノクローム絵画の国際的潮流とも緩やかに接続している。
しかし安田の作品では、筆跡そのものよりも “滲みがつくる空間” に主眼がある点が特徴的である。
作品群に共通するのは、厳密な線と、制御された滲みが併存していることである。
• 垂直に落ちる墨の筋
• 格子のように交わる平行線
• 染みのように広がる曖昧な濃淡
• 水面や霧を思わせる揺らぎ
これらは、日本的風景を直接描いたものではなく、
風景から感じ取られた「気配」だけを抽出した抽象構造である。
本作品の液体の時間を描く絵画
「水の記憶」とは
世界的には近年、
• 墨を用いたコンテンポラリー・インクアート
• 物質の流動性を扱うペインティング
• 反復線による構造的ミニマリズム
が注目されている(出典:国際展動向/墨表現の現代化に関する一般的研究)。
安田の作品は、この潮流において
「液体が描く時間=fluid time」
を可視化する絵画として位置づけられる。
滲みは偶然ではなく、
湿度・紙質・濃度・速度といった複数の条件が交差して現れる“現象”である。
安田はその現象を受け入れながらも、線を重ねることで秩序を与え、
自然現象と人為的構造が拮抗する緊張感
を作品に宿らせている。
墨の流れは水のように自由でありながら、線の重なりは建築的とも言えるほど精密。
柔らかさと厳密さが対等に存在することで、作品全体が “静かな息づかいをもつ構造物” のように感じられる。
安田は自然の形をそのまま描くのではなく、自然のリズム・呼吸・時間の流れを、墨の現象として再構成している。その結果、作品は風景の外側ではなく、風景の内側に潜む抽象的秩序を私たちに見せる。
鑑賞者が作品の前に立つと、
墨の滲みが「水音」のように、
線の反復が「風の振動」のように、
静かに身体へ入り込んでくる。
安田薫の絵画とは、
自然と人間の間にある
“見えない呼吸”を映し出す鏡なのかもしれない。
作品は、全て作家の手によるもので、
写真での表現には限界があります
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