島田 節子 「TEI–雲のメモ」
¥23,000 税込
残り1点
別途送料がかかります。送料を確認する
作家名:島田 節子(Setuko Shimada)
作品名:TEI–雲のメモ
サイズ: 450mm×325mm
額: 560mm×440mm
技法:ダーマトグラフ、リトクレヨン、解墨
制作年:2003
《TEI–雲のメモ》は、島田節子が長年にわたり探究してきた「線と思考」「記憶と知覚」の関係を、きわめて凝縮されたかたちで提示する作品です。雲のように定形を持たず、常に形を変え続ける存在を“メモ”として留めるというタイトルが示す通り、本作は完成された像を描くのではなく、意識の表層に一瞬あらわれては消えていく思考の痕跡を捉えようとしています。
淡い地色の層の上に重ねられた繊細な線は、対象を明確に描写するためのものではありません。むしろそれらは、記憶の断片、視覚の残像、あるいは言語化される以前の感覚として画面に漂います。線は時に幾何学的な秩序を示唆し、時に有機的な揺らぎを帯びながら、見る者の視線を静かに彷徨わせます。この不確かさこそが、《TEI–雲のメモ》の本質であり、鑑賞者自身の内面を呼び覚ます余白となっています。
島田の制作は、数多くのスケッチを重ねるプロセスから始まります。それは完成像を先取りする行為ではなく、描くこと=考えること=見ることが同時に進行する時間の堆積です。本作の画面には、その過程で生まれたためらいや確信、思考の跳躍がそのまま刻まれ、ひとつの時間的風景を形成しています。450×325mmという親密なサイズは、観る者を作品に引き寄せ、静かな対話を可能にします。
美術史的に見れば、島田節子の仕事は、戦後日本美術における抽象表現の流れの中に位置づけられますが、身体的ジェスチャーの強度を前面に出す表現や、物質性を主張する潮流とは一線を画しています。むしろ彼女の作品は、ヨーロッパの叙情的抽象や版画表現の系譜と呼応しつつ、線が思考へと限りなく近づく瞬間を追求している点に独自性があります。
推測ですが、《TEI–雲のメモ》における抑制された色彩と余白の扱いは、意味を固定することを避け、鑑賞者それぞれの記憶や感情が自然に立ち上がるための装置として機能しているのでしょう。この作品は、強いメッセージを語るのではなく、日常の中でふと立ち止まる時間を与えてくれます。繰り返し向き合うことで、その都度異なる表情を見せる――まさに長く寄り添うための作品です。
作家略歴(確認できる事実)
• 1947年 宮崎県生まれ
• 1970年 武蔵野美術大学短期大学部 油絵科卒業
• 1971年 同大学 油絵専攻科修了
• 1973年 モナコ現代美術展 出品
• 日本版画協会展、春陽会展、ほか国内外の展覧会に参加
• 1998年以降、名古屋 ギャラリーA・C・S にて継続的に個展開催
• 2024年12月 個展開催(2018年以来、約6年ぶり)
作品は、全て作家の手によるもので、
写真での表現には限界があります
現物をご覧になりたい場合は、ご連絡ください。
K'sギャラリーでご覧いただけます
観覧ご希望の方は別途連絡をください。
-
送料・配送方法について
-
お支払い方法について