束田 薫 「天空散歩」
¥30,000 税込
残り1点
別途送料がかかります。送料を確認する
作家名:束田 薫(Kaoru Tsukada)
作品名:天空散歩
サイズ: 330mm×240mm
額: 370mm×290mm ×30mm
技法:油彩
制作年:2026
淡い光が、ゆっくりと呼吸している。
束田薫の《天空散歩》の前に立つと、まず感じるのは「描かれた画面」ではなく、時間そのものが漂っているような感覚です。
黄、桃、淡い緑、青、褐色。
幾重にも重なる柔らかな色彩は、互いを覆い隠すのではなく、薄い空気の層のように透過し合いながら画面の内部で揺れ続けています。そこに走る無数の縦方向のストロークは、一定の律動を持ちながらも決して均質ではありません。一本ごとにわずかな揺らぎがあり、作家の呼吸や身体の重心移動、描いていた時間の長さまでもが静かに残されています。
近づくほど、その線は「描線」というより、気配へと変わっていきます。
森の奥に差し込む光にも見え、遠くに立ち並ぶ群像にも見える。あるいは空へ向かって伸びる建築の尖塔のようにも感じられる。しかし束田の絵画は、それらを明確な像として固定しません。抽象と具象、その境界が絶えず揺れ続けることで、観る者自身の記憶や感覚を静かに呼び覚ましていきます。
本作において特に印象的なのは、“上昇”と“沈静”が同時に存在している点でしょう。
垂直の線は空へ向かって立ち上がりながら、同時に大地へ根を下ろしているようでもある。軽やかな色彩は浮遊しながら、深部では褐色や黒が画面を支えています。そのため、この小品にはF4というサイズを超えた空間的な深度があります。
美術史的に見るならば、束田の仕事は、戦後抽象絵画が追求してきた「身体の痕跡」と「時間の堆積」の系譜に接続しています。
アクション・ペインティング以後、多くの画家が筆触に身体性を刻み込みましたが、束田の表現は激しいジェスチャーの誇示とは異なります。むしろ反復されるストロークを通じて、静かな持続そのものを画面化している。そこには、ミニマル以後の“反復と差異”の感覚と、日本的な「間」や呼吸感覚が繊細に共存しています。
《天空散歩》という題名は、単なる空想的なイメージではありません。
この作品には、自然を“描く”というより、自然の呼吸に耳を澄ませながら、絵画そのものを自然へ近づけていこうとする感覚があります。見る者は作品を読むのではなく、その前で静かに滞在することになるでしょう。
時間帯や光によって、色はわずかに表情を変えます。
朝には柔らかな気配として、夜には沈黙の深度として。
この作品は、空間を飾るというより、空間の呼吸を変えていく絵画です。
作品は、全て作家の手によるものですが、写真での表現には限界があります。
現物をご覧になりたい場合は、ご連絡ください。
K'sギャラリーでご覧いただけます
観覧ご希望の方は別途連絡をください。
-
送料・配送方法について
-
お支払い方法について