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塩路 明子 「イノチ」

¥20,000 税込

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作家名:塩路 明子(Shioji Akiko)
作品名:イノチ
サイズ: 直径200mm
額:
技法:円形ガラス絵,アキーラ
制作年:

生命が立ち上がる瞬間
塩路明子の《イノチ》は、そのタイトルが示す通り、「生命」という人類普遍の主題を描いた作品です。
しかしここに描かれているのは、植物でも動物でも、人間でもありません。
画面中央に現れる鮮烈な赤い形象は、花の開花にも見え、細胞分裂にも見え、血流にも見えます。
あるいは宇宙のどこかで生まれつつある星雲のようにも見えるでしょう。
その曖昧さこそが、この作品の魅力です。
生命とは本来、特定の姿を持つものではなく、絶えず変化し続けるエネルギーそのものだからです。
円という原初のかたち
本作でまず目を引くのは、支持体そのものが円形であることです。
円は人類最古の象徴の一つであり、古来より太陽、月、循環、宇宙、永遠を意味してきました。
始まりも終わりも持たない形。
その内部で展開される赤と緑、白と水色の流動的なイメージは、生命が誕生し、成長し、変容し続ける循環そのものを思わせます。
四角いキャンバスが世界を切り取る窓だとすれば、この円形作品はむしろ生命の循環へと鑑賞者を引き込む入口です。
ガラスという光の媒体
本作はガラス絵によって制作されています。
ガラス絵は日本では決して一般的な技法ではありませんが、光を透過し反射する特性によって、通常の絵画にはない独特の生命感を生み出します。
作品の前を移動すると、表面はわずかに光を受けながら表情を変化させます。
そのため画面中央の赤は単なる色彩ではなく、まるで脈動する生命体のような存在感を帯びています。
塩路はここで「生命を描く」のではなく、生命そのものが持つエネルギーの振動を画面へ定着させようとしているように見えます。
詩人としての眼差し
塩路明子は画家であると同時に詩人でもあります。
横浜詩人会賞を受賞した詩集『魔法の森』や近作『五感を紡ぐ』に共通しているのは、世界を説明するのではなく、世界の奥にある感覚を呼び覚まそうとする姿勢です。
本作にもその詩的感覚が色濃く表れています。
赤い形象は花のようでありながら花ではなく、生物のようでありながら生物でもない。
それは詩における比喩のように、意味を固定せず、多様な解釈を受け入れます。
だからこそ鑑賞者は、それぞれ異なる「生命」のイメージを見出すことができるのです。
抽象表現と生命のエネルギー
美術史的な観点から見ると、本作は戦後抽象絵画が探求してきた「生命力の可視化」というテーマと響き合っています。
例えば、
ジョアン・ミロ
は生命の原初的なエネルギーを記号的な形態へ変換し、
また
サム・フランシス
は色彩の爆発によって生命の躍動を表現しました。
塩路の作品はそれらの系譜を連想させながらも、より内省的で詩的です。
生命を叫ぶのではなく、静かに呼吸させている。
そこに独自性があります。
現代アートの文脈において
近年の現代美術では、環境問題やテクノロジー、身体性への関心の高まりとともに、「生命とは何か」という根源的な問いが再び注目されています。
本作もまた、その流れの中で読むことができます。
ただし塩路は理論やメッセージを前面に押し出しません。
彼女が提示するのは答えではなく感覚です。
生命とは何か。
その問いに対して作品は説明を拒み、代わりに色彩と形態による体験を差し出します。
見る者はその体験を通じて、自らの中にある生命の記憶と向き合うことになります。

小さな宇宙としての《イノチ》
直径20センチという小さな画面でありながら、本作には驚くほど大きなスケール感があります。

緑と水色が織りなす背景は、大地にも海にも大気にも見えます。

その中心を貫く赤は、血管のようであり、花弁のようであり、誕生の瞬間に放たれる光のようでもあります。
作品の前に立つと、私たちは生命を外から眺めるのではなく、その内部へと招き入れられる感覚を覚えます。
《イノチ》とは、生命を描いた作品ではありません。
生命が生まれ、広がり、変容していく、その永遠の運動を可視化した小さな宇宙なのです。

塩路明子(しおじ あきこ)は、1948年に横浜で生まれ、現在は横須賀市に在住する日本の画家・詩人です。18歳頃から創作活動を始め、1977年に詩画集『蜜蠟』を自費出版しました(当時は旧姓の柴岡明子名義)。画家としては、抽象画を得意とし、2003年以降は主に東京・銀座のギャラリーで個展やグループ展を多数開催しています。2019年には「ARTOLYMPIA 2019」で審査員特別賞(遠藤彰子賞)を受賞しました。また、2012年から2017年までは横須賀・浦賀にて「ギャラリー時舟」を開設・運営し、オーナーとしても活動していました。詩人としては、横浜詩人会の会員であり、詩誌「ぱれっと」の同人でもあります。2022年に刊行した詩集『魔法の森』で第54回横浜詩人会賞を受賞し、その後2025年には最新詩集『五感を紡ぐ』を上梓しています。詩集の表紙絵も自身が手がけるなど、詩と絵画の両方で表現活動を続けている点が特徴です。

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