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桐村茜 「無題」

¥38,000 税込

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作家名:桐村 茜(Akane Kirimura)
作品名:無題
サイズ: 145mm×110mm
額: 360mm×260mm ×20mm
技法:ミックスメディア
制作年:

記憶が物質になる瞬間
桐村茜の《無題》は、小品でありながら、一つの宇宙を内包した作品です。
焼け焦げた紙の痕跡、版によって刻まれた線、繊維のほつれを残した布、そして画面に散りばめられたフランス語の断片。
それらは単なる素材の集積ではありません。
まるで長い年月を経た古書の一頁が、記憶そのものへと変容したかのような存在感を放っています。
画面中央をゆるやかに横切る線は、風景を描いているようでいて風景ではなく、文字を書いているようでいて文章でもない。
それは人が何かを思い出そうとする瞬間に現れる、曖昧で不確かな記憶の軌跡そのものです。
「書くこと」と「内なる世界」
作品には
* écrire(書く)
* à l’intérieur(内側に、内部へ)
* 「無語」
という言葉の断片が配置されています。これらは意味を伝達するためのテキストではなく、記憶へ向かうための入口として機能しています。
特に「書くこと」と「内なる世界」という二つの言葉は、桐村の制作全体を象徴する重要なキーワードといえるでしょう。
私たちは記憶を保存していると思いがちです。
しかし実際には、思い出すたびに記憶は書き換えられ、再編集され、新たに生成され続けています。
この作品は、その見えない生成のプロセスを可視化しているかのようです。
糸が描く、時間の地図
画面下部に配置された白い布の断片は、非常に印象的です。
それは湖面に映る樹影のようにも見え、植物の根のようにも見え、あるいは神経細胞のネットワークのようにも見えます。
桐村は長年にわたり、自然界の光と影を糸でトレースする制作を続けてきました。
ここで布は単なる装飾ではなく、「時間が織り上げた痕跡」として存在しています。
その繊維は画面の外へとほつれながら伸びており、完成されたイメージではなく、なお生成し続ける記憶を示唆しています。
これは近年の国際的なアートシーンにおいて重要視されている「プロセスとしての記憶」という考え方とも深く共鳴しています。

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