高橋俊明 「蒼き彼方へ」
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作家名:高橋俊明(Toshiaki Takahashi)
作品名:蒼き彼方へ
サイズ: 400mm×250mm
額: mm×mm ×mm
技法:ミックストメディア
制作年:2026
青には、不思議な二面性がある。
深海や夜空を思わせる深遠さを宿す一方で、冬の朝の空気や雪面に差し込む光のような、どこまでも澄みきった軽さもまた青なのである。
高橋俊明が描く青は、まさに後者に属している。
その源泉となるのは、生まれ育った秋田の冬の記憶だ。
雪に映り込む青。
長い冬が終わろうとする瞬間の青。
冷たさの中に春の気配を孕んだ、透き通るような光。
高橋が描こうとしているのは、色ではなく、その記憶の質感なのである。会場へ足を踏み入れると、壁面いっぱいに広がる青と、空間を漂う無数の白い構造体が静かな呼吸を始める。
絵画と空間は対立することなく、一つの風景となり、鑑賞者を青の内部へと導いていく。
近づくほど、その画面は意外性を帯び始める。
荒々しい表情を持つ表面は、一見すると石やコンクリート、あるいは岩盤のような重量感を漂わせている。
しかし実際に作家が用いている素材は、建築資材の中でも非常に軽量なものだ。
それを削り、溶かし、盛り上げ、切り込みを刻み、独自のマチエールへと変えていく。
そして最後に、作品全体を一気に筆で染め上げる。
巨大な作品であっても途中で筆を止めない。
時間差によるわずかな色の揺らぎさえ排除し、一枚の画面全体を一つの呼吸で成立させるためである。
つまり高橋の作品は、彫刻的に見えながら、その本質は最後まで「描くこと」にある。
だからこれは、レリーフではなく絵画なのである。
興味深いのは、高橋が物質感を強調したいわけではないという点だ。
むしろ逆である。
軽い素材を、あえて重厚に見せる。
そして、その重量感すら最後には青によって溶かし去り、雪の光のような軽やかさへと転換していく。
ここには視覚の逆転がある。
物質は重く見えるほど、青はより軽く感じられる。
高橋俊明が追い求めているのは、素材そのものではなく、その先に立ち現れる「軽さ」なのである。
近年の抽象絵画は、デジタルイメージが氾濫する時代だからこそ、身体が触れた痕跡や素材との対話、制作時間そのものの価値を改めて問い直している。
高橋の仕事もまた、その文脈の中に位置づけられる。
しかし彼は物質性を誇示するのではない。
素材を極限まで身体化した先で、それを忘れさせるほどの軽さへと昇華している。
その点において、高橋俊明の作品は、戦後アンフォルメル以降のマチエールの系譜を受け継ぎながらも、「物質の存在感」ではなく、「物質を超えて知覚される軽さ」へと抽象絵画を更新していると言えるだろう。
《蒼き彼方へ》。
その「彼方」とは遠い風景ではない。私たちが無意識に抱いている「重さ」と「軽さ」の感覚、その境界を静かに越えていく場所である。
高橋俊明の青は、今日もなお、その彼方を静かに照らし続けている。
作品は、全て作家の手によるもので、
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